【起業事例】59歳で退職。マナー講師、生きがいづくりの講演を中心に活動

2018年4月2日

マイベストプロ岡山
人づくり、生きがいづくりプロジェクトの岡山ハッピーコミュニケーション
平松 幹夫(ひらまつ みきお)プロ

プロフィール
1947年生まれ。島根大学卒業。
ホテル業界で33年間、接客の仕事に従事。
ホテルでは宴会・ブライダルマネジャーを経験。
2006年、59歳でホテル業界を退き、岡山県教育委員会キャリア教育支援員として就職活動時のマナー指導などを行う。その後、カルチャー教室、マナー講師などで活動の幅を広げる。特に、高齢者に向けた生きがいづくりに関する講演や講座で豊富な実績を誇る。

 

インタビュー

ホテルマンからマナー講師への転身。
介護離職がきっかけの起業を支えてくれたのは妻と友人たち、人とのつながりを大切に。

 

50歳過ぎで親の介護をし始め今後の勤務に不安を覚える

――退職してからの人生を意識するようになったのは何歳のときですか?

仕事を辞めること、そしてその後の人生を考えるようになったのは50歳を過ぎた頃です。

私はホテルマンとして接客業に従事してきましたが、50代になってからは親の介護が気になり、これまで通り早朝出勤や夜勤などをこなしていけるかどうか不安を感じるようになりました。

勤め先には60歳以降の雇用制度もあったので、望めば仕事を続けることは可能でした。

しかし、親のためとはいえ私用で忙しい時期に仕事を休んだり、勤務時間を調整したりするのは部下や仲間に迷惑をかけるので申し訳ない。自分で仕事に対して「けじめをつけなければ」と思いました。

スキルはあっても体系立てた説明できる知識を求め通勤時間を勉強時間にあてた

――「けじめ」を考えるようになって、すぐにホテルを退職されたのですか?

「すぐに」というわけにはいきませんでした。50代半ばから気持ちに整理をつけて、準備を始めたという感じです。まず私が取り組んだのはライフタイルを変えることです。

勤務が不規則なうえ、夕食はほぼ外食。つきあいでお酒も飲んでいました。おまけに当時の私はヘビースモーカーで、1日2箱のタバコを吸っていました。体を大切にしなければ第二の人生も何もありませんので、禁煙することにしました。

タバコをやめて半年ぐらいは辛かったですね。でも、体が慣れて気分が落ち着いてくると、禁煙が成功したことを実感できるようになり自信が出てきました。「やればできる!」と思いました。

ほかにやめたものは車通勤です。電車に切り替え、通勤時間を読書にあてるようにしました。

私には、マナーやサービスについて実践で培ったスキルはあります。しかし、50歳も過ぎれば実務力だけでなく、体系的に理論立てて説明できるような知識も備える必要があります。それができなければ、今後の仕事人生にスキルを生かしていくのは難しいと考え、通勤時間を勉強時間として活用しました。

マナーと一口に言っても、接客マナーやテーブルマナー、冠婚葬祭のマナー、ビジネスマナーとさまざまな種類があります。ベースにあるのは相手に対して失礼がないようにふるまったり、相手に喜んでもらえるようにもてなしたりする思いやりの心で、人間関係を築いていく上で欠かせないものです。

気を置けない仲間や恋人との付き合いなど、人とのつながりは人生に彩りを添えてくれるかけがえのないものです。私たちがより良い人生を送るためには人間力が必要で、それを高めていくノウハウやマナーをお伝えしていきたいと考えるようになりました。

同時に、高齢者の生き方にも思いが及ぶようになりました。当時、私は50代でしたが、いずれは自分もシニア・高齢者と呼ばれる世代になるわけです。少子高齢化が加速している日本の社会背景も鑑みて、生涯学習インストラクターや健康生きがいづくりアドバイザーシニアライフアドバイザーなど高齢層の支援につながる資格も取得しました。

 

定年前の59歳で退職。マナー講師としての道を歩みだす

――ホテル勤務を終えたのは何歳のときですか?

実際に仕事を辞めたのは59歳のときです。岡山県が高校生の就職活動を支援するために「岡山県教育委員会キャリア教育支援員」を募集していました。それに応募し、合格したのでホテルを退職しました。

これが私のマナー講師としての出発点で、岡山県内の高校に出向き、面接や就職で役立つ言葉づかいや所作などを教えるようになりました。

キャリア教育支援員の後は、一般企業に非常勤として勤め、岡山のほか鳥取や島根といった中国地方、四国などの公立高校でマナーを指導しました。

2~3年ほど高校生を対象とした講師が中心でしたが、もっと幅広い世代と接点を持ちたいと考え62歳で思いきって独立しました。そして、現在の「岡山ハッピーコミュニケーション」の平松幹夫として活動をスタートさせました。

独立後に初めて取り組んだのは「女性磨き講座」で、企画書を地元の公民館に提出しました。内容は食事のマナーや会話力、メイク術などを磨くもので女性司会者を立てて会を進めるプランでした。担当者からは「女性に喜ばれるだろう。おもしろい企画だ」ということで許可をもらい、講座を開催することになりました。

参加者は20代~60代と幅広く、自分磨きから冠婚葬祭のマナー、コミュニケーション術などテーマの幅も広がり、カルチャー教室などでも講座を展開するようになりました。おかげさまでたくさんの方にお越しいただくようになり、多いときは月に10~15本の講座や講演を行いました。

行政や新聞社主催の講座のセミナー講師担当が信用や認知度を上げるきっかけに

――講師としてご活躍ですが、オファーが増えた理由は何だとお考えですか?

現在、私は70歳になりますが、10年あまり講師業で忙しく過ごすことができたのは、行政、社会福祉協議会、教育委員会などの公的機関や各種団体からの依頼が増えたことが大きいと思います。新聞社の目にも留まり、メディアからの依頼も増えました。行政や新聞社が主催する講座や講演会は参加者から信頼もあります。こういった場の活動を通じて信用や認知度が上げることができました。加えて、日常生活に直結したマナーや超高齢社会に対応した中高年齢者の生きがいづくりの内容が功を奏したと思います。

私はとても幸運です。講座や講演を通じて人の輪が広がり、お声掛けいただくことで講師としてひとり立ちし、忙しい日々を送ってまいりました。とても幸せなことだと思います。

長年、ホテルマンとしてサービスに徹し、言葉づかいや立ち居振る舞いを常に意識してきましたが、そういった姿に共感していただけたのかもしれません。

若者ではなくシニア世代だからできること、伝えられることがある

――現在の活動についてお聞かせください

今は地元に貢献したいと考え、私が暮らす和気町(和気郡)やお隣の赤磐市の高齢者が生き生きと暮らしていけるように、生きがいづくりや自立支援の活動に力を入れています。

私自身も年齢を重ねていますので、参加してくださるみなさんに寄り添ったお話ができるのが強みだと思っています。

「孤独死」という言葉がニュースなどで流れるように、高齢者のなかには社会とのつながりがなくなり、孤独に暮らしている人が少なくありません。

ひとりで過ごす時間が長く、コミュニケーションに自信が持てなくなっている方もいらっしゃいますので、会話のきっかけづくりの方法や人と接する際のマナー、及び生きがいづくりなどをお伝えして、前向きに生きてほしいと願っています。

こういった活動は、若い人ではなく私のような世代が十分にお役に立てます。歳をとってもできることがある、そしてそれを実現できるのは起業しているからこそだと思います。

定年起業は夫婦・家族での話し合いが大切

――起業を志す人たちにメッセージをお願いします。

私のまわりにも、これまでのスキルを生かして「何か事業を始めたい」と考えている方がたくさんいらっしゃいます。しかし、思いだけで具体性がない方が多いように見受けます。

起業しても成功しているのはほんの一握りです。ビジネスモデルについてプランニングするのはもちろんですが、残りの人生を誰とどのように過ごしていくのか、ライフプランをきちんと描けているかどうかが大切だと思います。収入も大事ですが、先々起こるであろうことを予測して、何が起きても乗り越えていけるように心構えをしておかなければなりません。

うまくいっているときには人が寄ってきますが、ダメになると誰もいなくなります。

そのため、どんなことがあっても自分に責任があるのだという覚悟が必要です。あとは男性であれば奥さん、女性は旦那さんの理解と支えです。これをおざなりにすると、老後は立ち行かなくなります。なにしろ、一番そばにいて支えてくれる存在ですから。

私の場合、定年前に会社を辞めました。残念でしたが覚悟の上です。経済的にも不安定になりますので、まずは妻に相談して、ふたりで今後について話し合いました。そして、妻も私も納得したうえで退職や起業のタイミングを決めました

独立して初めて講座を開くときは、妻が自分のつてを使って人を集めてくれました。ホテル時代の仲間や後輩も、マナー講師やシニアライフの講座をオファーしてくれました。ホテル業界は縦横のつながりが密ですから、私の人生は人に支えられてきた部分が多分にあります。

シニア世代の役割は長年培ってきた経験や知識を伝えること

――人付き合いのほかに大切なことはなんでしょう?

人脈のほか、事業内容によっては元手もいります。私は、起業でお金がかかったわけではありません。講師ですので自分の体が資本です。現在も経費が発生するわけではありませんので、資金繰りのストレスはありませんが、余力を残しておく意味で蓄えが必要です。

利益のみを追求していたら合理的にならざるを得ませんので、仕事が雑になってしまう可能性があります。それではみなさんに信用してもらえません。誠実な仕事をしなければ対価を払ってもらえませんので、資金面でも多少は余裕を持っておくのが良いでしょう。

これまでを振り返ると、いただいたご縁に自分なりに精一杯お勤めする気持ちで取り組んできました。体力的にハードな時期もありましたが、参加した方々に喜んでいただけることが原動力となり心はいつも豊かでした。

起業するにしても、再就職をするにしても、定年後は人とのつながりが大切です。

またシニア世代の大切な役割は、長年培ってきた経験や知識を次世代に伝えることだと思います。従って社会貢献ということもぜひ心にとめていただきたいと思います。世界に類を見ない超高齢社会において、シニア世代がしょぼくれて生きるか、元気はつらつと生きるかでは雲泥の差があります。身も心も元気でご活躍ください。ご健闘をお祈りいたします。